お坊さんの独り言

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大地に生きた山下惣一さん

今夏、お亡くなりになった
農民作家・山下惣一さん。
中学卒業後、農業に従事しながら
その体験を小説やノンフィクションで
発表し続けてこられました。

 

直木賞候補にもなった代表作『減反神社』。
私は高校生の時に読みましたが

農民のみが知る痛快な内容で

とても印象に残る作品でした。

 

余談ですが、山林などの道端にゴミを捨てる輩への
啓蒙策として、簡易な鳥居が設置されているのを
見た事があるでしょうか?

私見ですが、あの簡易鳥居を見た時、
減反神社』のアイデアだ!と直感したほど、
山下氏は常に現場目線からモノごとを捉えることが
出来る作家だったのではないでしょうか。

 

 

この本は山下さんが孫たちに問いかける形で
食べ物のこと、農業のこと、自然のこと、生きることについて、

分かりやすく書かれています。
分かりやすいけれど、とても深い。
納得のお話が満載です。
農家の私が読んでも

ためになる事柄ばかりで、
保存版に早速購入しました。

 

「農健(すこ)やかにして、食健やか、
 食健やかにして、人健やか」を
地で生きてこられた人の言葉は、

言葉を超えて生きる力となります。

 

あるお医者さんが講演で
「命を見たことがありますか?」と質問すると
誰もが見たことは無いと言う。
お医者さんは

「よく見てください、これが命ですよ!」と
大根やニンジン、キャベツを並べて見せたそうです。


哲学的な理屈っぽい説明より

実に明快で当たり前の答え、
こういうまっすぐで真っ当な

捉え方が現代人には必要だと思います。


「農業の「の」の字も知らない大人たちが、

  買う事しか知らない子供を育て、

 その子供が大人になり、

 次世代を担う子育てをしている・・・」


「その人の生涯の好き嫌い、

   すなわち嗜好は七歳ぐらいまでの食歴で決まる・・・」


「食品」でなく「食べもの」によって

   自分のセンサーを鍛えてほしい・・・」

 

妙法庵の私が

農作業を営む理由も

農作業即仏道であり、

地に足の着いた宗教観を養う為です。

その体験を通して、縁ある方々に

真っ当な仏教を伝承していく為です。

 

山下氏が孫たちに残した「日本の伝承」が
現代の日本人にも広く行きわたる事を

願って止みません。