お坊さんの独り言

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『八つ墓村』で思い出したこと

夏の入道雲を見ると
思い出す邦画があります。
今から40年前に公開された
松竹映画『八つ墓村』です。
飛行場に立ち昇る入道雲が
印象的なラストシーンでした。

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金田一役の渥美清さんが
公開前に語った言葉です。

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「『八つ墓村』の原作の
一番元になったという所へ
今度、金田一耕助として旅をしてきました。
三十数人殺した人が、
自分で命を絶ったという場所でした。

その旅をして、しみじみ思ったんですけども、
あの中国山脈の麓には攻めた毛利と敗れた尼子、
これは遠い昔の戦国の物語ではなくて
現在でもその子孫たちが、
ごく新しい石碑を建てたり、
あるいはみんなが集まって
先祖の霊を偲ぶ会をもったり、
落人の部落があったりします。

人の命は消えても、
血となってその子孫に
ずっと残っていくもんだなと
思いました。

今度のこの『八つ墓村』というのは、
決して絵空事の物語ではなく
現在も生き残っている人たちの話だと、
金田一はそう思います。」

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日本各地の山村を歩くと、
八つ墓村のような風景が
今でも息づいていることが分かります。
その土地で暮らしてきた
長い歳月の中には、
様々な人間ドラマや
時には事件もあったことでしょう。
それが風土となり、人の血となって
残っていくものなのでしょうか。

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「病人田」と呼ばれる
山あいの田んぼを見たことがあります。

その田を男性が耕すと、
必ず不吉な病や事故で

死んでしまうという
昔からの言い伝えがあり、
地元の民話にも載っているほど

有名な恐れ事でした。

 

事実、その田を手に入れ
耕作した農家では、
次々と男性が亡くなり、
女性だけで田を耕すことにしたら
災厄が止まったと
お聞きしました。

確かに、なんともいえない
暗い雰囲気が漂った
田んぼだったことを覚えています。

このような、いわゆる「忌み地」と
呼ばれる田や畑、山の話は全国各地で
見聞します。
その場所を供養したり、慰霊碑などを
祀ることで現象がピタリと止まった
という話もよく耳にすることです。

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その土地や祖先の想いを受け入れ、
慰め、尊んでいく。
どんなに時代が変ろうとも
決して疎かにしてはいけない事だと
つくづく思いました。