お坊さんの独り言

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吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』

 

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恥ずかしながら、この歳になって
初めて存在を知り読みました。

読書に年齢は関係ないですが、
主人公コペル君が中学生なので、
現役の小中学生に読んでいただきたい
良質の人生読本です。

今、漫画版でも話題になって
多くの大人たちが読んでいるようですね。

私は岩波文庫版で読みましたが、
読みやすい文章と時代を感じさせる
素朴な挿絵を懐かしみながら、読了しました。

80年前、日中戦争に突入し
言論統制が始まっていく中で
少年少女を時勢の悪い影響から守りたい、
と思い立った作家がいました。
名作『路傍の石』の山本有三先生です。

山本先生が編纂した全16巻の『日本少国民文庫』、
その中で吉野氏が倫理をテーマに執筆し
世に出たのが、「君たちは・・」だそうです。

 表紙の解説文、
「著者がコペル君の精神的成長に託して
 語り伝えようとしたものは何か。
 
 それは、人生いかに生くべきかと問うとき、
 常にその問いが社会科学的認識とは何か、
 という問題と切り離すことなく
 問われねばならぬ、というメッセージであった。」

 この解説文に納得しました。
 宗教やスピリチュアルの世界では
 この社会科学的認識をすっ飛ばして
 いきなり「真理」や「教義」「お告げ」を

 説き始めがちなのです。
 

 人の心をテーマにする

 宗教やスピリチュアル分野と

 社会科学は本来、
 あざなえる縄のごとくリンクして
 説き伝えるべきものなのに、
 その認識が欠落して、
 ともすれば思考停止・依存させているのが
 宗教界やスピ系の問題なのでは?

 と私は見ています。 

 

 その意味でも、この本はあらゆる世代の方々、
 宗教関係・スピ系の方々にも読んでいただきたい。
 全編に亘って、あたたかいメッセージに溢れている作品です。