お坊さんの独り言

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お盆棚経を終えて

 

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原爆忌終戦忌・お盆と

8月は亡き御霊と

向き合う機会が多い月です。

 

毎年13、14、15日は

棚経といって師匠寺の檀家さん宅へ

お経を上げに参ります。

お盆飾りの棚前で、

「年に一度の里帰りをされた」

ご先祖様を敬い、ご供養を行うのです。

 

家族は沢山のお供え物を供え、

目にみえない先祖の霊をもてなす。

お坊さんが来れば、当たり前のように

座敷に上がってもらい、

後ろに座って手を合わせる。

このような行事を先祖代々、

連綿と続けていく・・・

 

時代の流れ、

社会の変化、

家族構成の変化、

はたまた、これは仏教なのか、

と棚経に対する意見もありますが

この伝統行事を行うプラスの面は

限りなく大きいと改めて感じました。

 

毎夏、20年ほど棚経に伺っているので

お互いの信頼関係が築かれ、

ご家庭の様々な事柄にも触れていきます。

 

あるご家庭は、10年ほど前

息子さんを若くして亡くされました。

ご両親の悲しみが消えることは

ないですが、その間にも

新たな命が誕生し、

ご先祖供養を大切に行うことが

子孫の勤めだからといって

お墓の横にお堂を建立されました。

今回、お参りさせて頂きましたが

そのお志に胸打たれました。

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あるご家庭は、

昨年、お母さまを突然

亡くされました。

棚経回りの際には、

毎年、沢山のお昼ご飯を

用意してくださり

大変お世話になったご婦人でした。

 

今年は、東京で保母さんをしている

娘さんがわざわざ休みを取って

帰省し、お母さまの意思を継いで

お昼ご飯を用意して下さいました。

前日、仕事を終えて

夜遅く帰省し、お盆参りと

お昼のお接待をしてくださった後、

すぐ東京に戻るとの事でした。

 

娘さんの実家は

山あいの静かな場所にあります。

歩いていける場所に

友達の家はなく、

両親は共働きでした。

 

私が伺い始めたころ、

幼稚園児だった彼女は

小学生の兄と留守を守る

お婆ちゃんと一緒に

出迎えてくれました。

 

お客さんが来るのが

嬉しかったのでしょう。

私の似顔絵を描いて

見せてくれたり、

人なつっこく

振る舞っていました。

 

このような環境で育った

この子は、きっと

素晴らしい人間になる、

そう思いました。

 

お婆ちゃんが亡くなり

お母様も亡くした

彼女は今、保母さんとして

しっかりと力強く

自分の人生を

歩んでいます。

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信仰の薄い現代といいますが、

棚経という行事を通して

家族が亡き命と繋がり

心の触れ合いを再発見していく。

そんな光景を、あちらこちらで

体感したお盆でした。